Random Memorandum 2005Q1

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何用あって月世界へ 山本夏彦名言集 上田康夫編 2003文春文庫 †

1. 著者は大正4年生まれで、戦後出版社を起こし、後半隠居のような立場からダンディなコラムを残す
2. この本は、山本夏彦氏の多数のコラムから箴言を抜き出したもの
3. INNOCENCEに出てくる箴言はここらも多数とられている
   • 幸運が三度姿を現すように、不運もまた三度兆候を示す。 見たくないから見ない、気がついても言わない、言ってもきかない。そして破局を迎える
   • ロバが旅に出たって馬になって返ってくるわけではない

御書物同心日記 出久根達郎 2002講談社文庫 †

1. 著者は古書店の主
2. 幕府の公文書や蔵書を保管する紅葉山文庫(現宮内庁書陵部)を舞台にした古書好きの人々のドラマ
3. というか、本が中心にあって人々の人生がその周りにある感じ

奇譚草子 夢枕獏 2004文春文庫 †

1. 筆者が20代の時に友人知人から見聞きした奇譚という設定で、日常の延長線上にある怪奇。単に夜中に小人が出てくるが特に何もしないという「友人の」話や、料理店でみそ汁をつくる時にシジミに声をかけてやると貝の開く率が多いとか・・・
2. その他、仏典からブッタの経験したエピソードなど
3. 珍しく落丁本後半が袋とじ状態

杞憂 †

1. 『列子』天瑞第一
   1. (道家根本思想書：「老子」「荘子」「列子」。著者とされる列禦寇の詳細は不明だが荘子(BC370頃)に登場している）
   2. 周代の杞国（つまり遠い昔のどこか）に天が落ち地が崩れる事を心配する男が居たが、彼の友人が現に天の中で呼吸し地の上で飛び跳ねているのだから天地は盤石なものなのだと諭され安心した
   3. その話を聞いた楚の長廬子は、形ある物は崩れるのだから、崩壊する時期が来たらやはり心配するだろうと笑った
   4. それを聞いた列禦寇は、人間には所詮天地の未来のことなぞ分からぬのだから天地が崩壊するかしないかなぞで悩むだけ無駄といった。
2. 顛末
   1. 先週初めに睾丸が大きくなったような気がして、さらに握られているようなくすぐったいような感じがしたので病院に行ってきました
   2. 触診・超音波診断で炎症が発見されなかったので精巣癌の疑い有り
   3. 血液検査の結果ガンマーカー（癌細胞が出すタンパク質：臓器によって異なるので何処の癌かまで特定可能）は発見されませんでした
   4. 結局炎症の初期段階ということで、抗炎症剤（ポンタール）＋抗生物質（クラビット）の処方
   5. 艶っぽいのが原因ではないです。はっきり断言できるのは、それはそれでorz
3. 理論的には 100000 : 1 の賭(日本での症例は10万人に1人)。症状によって odds が 1/100倍 になったとしてもまだ、1000 : 1の賭。まず負けることはないけれど、この１週間生きた気がしませんでした・・・とにかく字を読んでいないと、核分裂のように良からぬ考えがどんどん増えていく・・・
4. 新約聖書 ピリピ4-6

   何も思い煩わないで、あらゆる場合に、感謝を持って捧げる祈りと願いによって、
   あなたがたの願い事を神に知っていただきなさい。

百物語 杉浦日向子 1995新潮文庫 †

1. 江戸時代、郊外の瀟洒な一軒家に住むご隠居が99話の奇談を集めたという設定で、３〜５ページ程度の江戸期が舞台の短編奇談を集めたもの

江戸職人奇譚/続江戸職人奇譚 佐江衆一 1998/2003 新潮文庫 †

1. 江戸時代の名工・名人が、自分の技をとぎすましたばかりに日常からあちらの世界に踏み入れてしまう短編。
2. あちらの世界といっても、犯罪者になったり狂人になるほか、人の生き死にを左右したり、一世一代の名品と命を引き替えにしたり、幕政の枢機に関わるなどいろいろ。

世界の中心で愛を叫んだけもの ハーラン・エリスン 1979ハヤカワ文庫 †

1. 時間と空間の交差するところ（天国？）は、不合理や矛盾を「けもの」として外部に排出することで、秩序ある平和な世界を保っている
2. 排出された「けもの」は、いろいろな時間と空間にあらわれてそこに影響を与える（たとえば中世の残虐な征服者や現代の異常犯罪・地球とは違う恒星系の原始文明としてあらわれる）
3. ある時、異端の科学者が、「けもの」を貯蔵することに成功する。
4. そして、「けもの」を外部に排出せずに時間と空間の交差するところに貯蔵することを提案する
5. しかし、時間と空間の交差するところの人々は、それに反対し、異端の科学者を排出することを決定する。
6. かくして、空間と時間には未だに矛盾や憎悪がばらまかれて不条理や争いが耐えない

• 実験的SF小説なので、ストーリーが難解。
  • 時間も空間も違う事件が細切れに展開していき、段々に時間と空間の中心に原因があることが明らかになっていく。
  • 隠喩や伏線が多く一度読んだだけでは細切れの事件が物語の中でどのような役割をしているのかよくわからない
  • 「けもの」＝「時間と空間の交差するところの不合理や矛盾」＝「異端の科学者」＝「時間と空間の交差するところの住人」＝「けものに影響を受けた人々」

• 他、日常の中や弱者の中に潜む暴力性に焦点を当てた短編14。

日本の古典50冊 阿刀田高 2002三笠書房 †

• 古事記・万葉集から日本永代蔵まで、歌集・歴史・随筆・小説を問わず日本の代表的な古典のあらすじをまとめたもの
• 古典を読むきっかけ・目次として利用してほしいとのこと
• この本をきっかけにして、「歎異抄（親鸞）」を読み返してみました

amazon-pluginを入れる †

• 閑舎さんがつくられたPukiWiki用plugin。有難く使わせていただきます。

博士の愛した数式 小川洋子 2003新潮社 †

• 数十年前の事故で脳を損傷して以来世捨て人となった老数学者(事故以前の記憶・能力そのままに、事故以降は80分しか記憶を保てない)と、彼の元に派遣された家政婦と、家政婦の息子(博士は彼を√とよんでいる)の物語
  • 毎日(80分ごとに)初対面になるおもしろさとかなしさ
    • 痴人であるがゆえに人間性が包み隠さずでているし、損得掛値のない付き合いになる
    • 博士の本性が純真で紳士あること
    • 本来優秀な人間である博士が、毎朝自分が痴人であること新たに絶望する哀しさ
    • 博士の老い（わずかに残されている能力が失われていく）
  • 博士と暮らすうち、家政婦と√が数学の美しさ深遠さに気づいていく
  • 家政婦である主人公の過去の悲哀
  • 博士の過去の悲哀
  • √の成長
• 所謂/売れる/売れるように作った/本(2005年時点で51刷)だが、「世界の中心で愛をさけぶ」のようにコテコテしていないところが良かった。主人公の家政婦や博士の過去の人生の悲哀についてもヒッチコック映画の冒頭のようにちょっとした小物やしぐさで読者に示唆し、逆にクドクド説明されるよりも効果的に物語に厚みが出てきている。
• ３時間で一気に読み通し、素直に「エエハナシヤ」で終われた

楽しい古事記 阿刀田高 2004角川文庫 †

• 古事記の中の有名なエピソードを現地を訪ねた紀行文を併せて語ったもの

  イザナミ(女神)--+-- イザナギ(男神)
                  |
                  | 【国生】
                  |  「我が身の成り余れる処を、汝が身の成り合わぬ処に刺し塞ぎて
                  |    国土生み為さぬと思うはいかに？」
                  |  「しか善けむ」
                  | 【黄泉の比良坂】
                  |   諸神の最後火神を産む時にイザナミは火傷を負い死ぬ
                  |   イザナギは出雲の比良坂からイザナミに会いに黄泉の国に行くも・・・
                  |
                  |         【天の岩戸*1】
      +-----------+- - - - - - - +-----------+-----------+
      |           |              |           |           |
  日本列島        自然神      アマテラス  ツクヨミ   スサノオ
  (淡路島・四国・ 諸神        (太陽神)      (月神)   (海神)【八岐大蛇】    
   隠岐・九州・                  |                       |
   壱岐・対馬・           アメノオシホミミ               +---------+
   佐渡                          |                       |         :
   末子が本州)               ニニギの命【天孫降臨*2】    |         |
                                 |                    ｽｾﾘﾋﾞﾒ--+--大国主命(大黒)
                            +----+----+                       | 【因幡の白兎】
                            |         |                       | 【国譲り】
                          海幸彦    山幸彦                    |    →出雲大社
                        (隼人の祖)    |                     ﾀｹﾐﾅｶﾀ  
                                      |                       →諏訪大社
                                   1.神武天皇【東征】
                                      | 天叢雲の剣をｱﾏﾃﾗｽから与えられる
                                      | （八岐大蛇の尾からでたものをスサノオ   
                                      :   がアマテラスに献上)
                                      |
                                  12.景行天皇
                                      |
                                      +----------------+
                                      |                |
                                  13.成務天皇   ヤマトタケルの命(*3,4)
                                                       |
                                                14.仲哀天皇--+--神功皇后(*5)
                                                             |
                                                         15.応神天皇(入り婿?)
                                                             |
                                                         16.仁徳天皇
                                                             |
                                                             :
                                                             |
                                                         26.継体天皇
                                                             | (越前豪族が簒奪?)
                                                             :
                                                             |
                                                         33.推古天皇(*6)
                                                  (古事記は推古天皇の事跡まで)

• *1:岩戸の前で宴会を開くことを発案したのはオモイカネの命。踊ったのはウズメの命
• *2:九州に降臨したニニギの命は、ブサイクな姉と美しい妹を娶るが、子孫(つまり天皇家)は全て妹の系統。実は姉は長寿を象徴していて、妹は繁栄を象徴している。それ故天皇家は繁栄していても寿命が短い。
• *3:九州のクマソを平定。関東征伐には天叢雲(ｱﾒﾉﾑﾗｸﾓ)の剣を与えられる。現在の焼津の草原で火攻めに会うも、天叢雲の剣で周りの草を刈り助かる。以後天叢雲の剣は草薙の剣とも呼ばれる
• *4:ヤマトタケルは、関東征伐中に同伴していた妻を失う。平定を終えて大和に帰る途中、足柄（箱根）で振り返り「吾嬬(ｱｽﾞﾏ)よ」と叫んだ。以降、関東(東)をｱｽﾞﾏと呼ぶようになった。
• *5:朝鮮平定の神託を疑った仲哀天皇は即死。妊娠中の神功皇后は、生まれる前の子（応神天皇）を次の天皇と定め、自ら摂政として軍を率いて朝鮮を平定する。cf.好太王碑文:397年に攻め込んできた倭軍を撃退した好太王をたたえる碑文。鴨緑江上流
• *6:神武天皇の即位の年を算出したのは聖徳太子。中国の思想で、辛酉の年は21回毎に(つまり60*21=1260年ごとに)大事が起きる年とされている。
  • 皇紀元年 BC 660:神武即位
  • 皇紀1260 AD 601:斑鳩遷都(推古9年:摂政の聖徳太子が主導的役割)
  • 皇紀2520 AD1861:1867大政奉還 1868王政復古 1869東京遷都 / 1853ﾍﾟﾘｰ来航
  • 皇紀2600 AD1940:太陰暦→太陽暦の切り替えにより一年ずれた
  • 皇紀2660 AD2000:
• 古事記では末子相続が一般的。この本では、古事記の編纂を命じた40天武天皇の影響と推測している（兄の38天智天皇の死後、甥の大友皇子=39弘文天皇から帝位を簒奪）。
  • 南方系の狩猟採集民の風俗の影響もあるのでは？殷(商)も末子相続だったみたいだし、王朝時代の妻問い婚と現在の雲南省の少数民族の風習にも関わりがあるようだし
  • 関係ないけど、天智天皇って世界史では「中世」の人なんだよね・・・Age Of Empiresでも中世封建制の人物として出てくる。

ディアボロス DVD 1997米 †

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• 要はヨブ記 + NYの法曹界・金銭万能主義に対する皮肉

1. 悪魔ジョン・ミルトン(アル・パチーノ)は、法曹界の大物となって人間を弄んでいる
2. この話は、田舎の敏腕弁護士ケビン・ローマックス（キアノ・リーブス）をおもちゃにする話。善意やちょっとした間違えから悪行を為させて、それをきっかけに能動的に悪を行う悪魔の手先にしよう(神の創造物を堕落させることが悪魔の喜び)という計画。
3. 最初に悪魔は、ケビンをNYの自分の法律事務所にスカウトし、金（高給・超高級アパート)や名誉(政財界の大本とのパーティー)をケビンに与える。
4. そしてに、
   1. 妻をノイローゼにしていき
   2. 地位や権力を持っている(NY最大の不動産デベロッパ(トランプのこと？))卑劣な殺人鬼を弁護する仕事を与える
5. 悪魔は、ケビンに「自由意志」で悪行を為すようにさせたい
   1. 本来かけがえのない妻の看護よりも、さらなる地位や名誉のとっかかりとなる仕事を選ばせたい
   2. 合法的に殺人鬼を無罪放免にさせたい
6. 他の類型的な悪魔の話と同様に、ケビンは奸策に落ちる
7. ケビンは、自分の「自由意志」の結果として妻を失い、殺人鬼は野放しになる
8. 良心の呵責に苦しみまた悪魔に弄ばれていた事を知ったケビンは、自殺することで悪魔の今回のいたずらの最終目標を打ち砕く
9. というところで白昼夢が終わり映画の冒頭に戻る

過去の負債・未来の負債 †

1. 未来の負債に対して今から準備しておくことが重要
   • って上長がさらにその上長に怒られています・・・(現在進行形)
2. 自問してみるに、「負債」のたとえを使うならば、今「未来の負債」を返済することは、マイナスの金利を払う事になる？
   • つまり
     • C1 = 「負債」が発生してから対処するコスト
     • C2 = 「負債」を一瞬で処理した場合のコスト（「金利」がかからない場合)
     • C3 = 「未来の負債」を今から返済するコスト

       C1 > C2 > C3

   • 勿論、「未来の負債」のNPV（Net Present Value：正味現在価値）を考えて、現在それを処理するために資源（人月＝お金）を投入する価値があるのかを図る必要はある
3. 自問してみるに、予測ミスによってパイプラインが乱れることはないのか？
   • 人間の仕事ではパイプラインが深くないのでたとえ予測がはずれても被害がすくない
   • 人間の仕事の場合では、並列度（パイプラインの深さ）を上げるよりも負荷（投入する人員数）を一定にする方が優先度が高い
   • そういう意味で、将来新たに負荷が発生する要因を事前に予測して対処するのは重要なことだろう
4. あれ？いろいろ引喩失義して考えたけど、結局、当たり前のことを一言でかっこよく言い表しただけか・・・

櫻 †

ウチの櫻。花はきれいだけど掃除が大変。

プログラムにバグがないことを証明できないことは証明されている †

1. 「ゲーテルの不完全性定理」のサブセット

   ある公理系で、その公理系内のあらゆる定理・公理を使用して
   その公理系が無矛盾であることを証明することはできない

2. 公理系をプログラミング・システムにすれば証明終了

   あるプログラミング・システムで、そのプログラミング・システム内の
   あらゆるプログラミング言語の言語定義・サブルーチンを使用して
   そのプログラミング・システムが無矛盾であることを証明することはできない

3. 某将棋ソフトを作っている人が留学する時に、「持って行けないから」とくれたもの。まぁ情報科学の学生ならば、これくらい読んどけという叱咤の意味もあったんでしょう・・・その他にも古典的名著というか、これくらい教養として読んでおかなければ恥ずかしいという本をくれた → 今もキャッシュ領域(机の上の本立て)に置いてありますよ(To K氏)

   クヌース先生のドキュメント算法	The Craft of Text Editor	算法通論

Random